歯科の重要性
院長へのインタビュー記事より

大田区蒲田。下町の情緒と活気が混ざり合うこの街で、三代にわたり地域住民の「噛む喜び」を支え続けてきたのが「小山歯科医院」だ。院長の小山治彦先生は、歯科医師であると同時に、かつて科学者を志し再生医療の研究に没頭した「探究の人」でもある。白を基調とした、まるで真っ新(まっさら)なキャンバスのような診察室で語られるのは、4-META接着技術や物理学的な視点によるレーザー治療といった、エビデンスに基づいた緻密な治療戦略だ。一方で、オペラや能の舞台に立つ表現者としての顔も持ち、口腔(こうくう)を「人生を謳歌するための器官」と捉える温かな眼差しを忘れない。高度なテクノロジーと、患者の心に寄り添う「ラポール(信頼関係)」の構築。その両輪で歯科医療の限界に挑む院長の、3400文字に及ぶロングインタビューをお届けする。
(取材日:2026年1月6日)
三代続く「ホームタウン」への想いと継承することへの使命感
| 先生はここ蒲田で三代目とお聞きしました。この地で診療を続けることへの想いをお聞かせください。
私は生まれも育ちも、ここ蒲田です。幼少期から、父や祖母が地域の方々の健康を守り、感謝されている姿を見て育ちました。私にとって蒲田は単なる開業地ではなく、自分自身のアイデンティティが形成された大切な「ホームタウン」です。街の景色が変わり、新しい住民の方が増えても、根底にある「人情味あふれる街の気質」は変わりません。大学病院や研究機関で最先端の医療を学んだ後、私が戻るべき場所はここしかないと考えていました。先代たちが築き上げてきた地域の方々との信頼の歴史を継承しつつ、私が培った新しい科学の知見を融合させることで、蒲田の皆さんに「ここに来れば、最新かつ誠実な医療が受けられる」という安心感を提供し続けたい。それが三代目としての私の使命だと思っています。
| 歯科医師を志す前は科学者になりたいという夢をお持ちだったそうですね。
ええ、子供の頃は純粋に、テクノロジーの進化が全ての人を幸せにする未来を信じていました。その探究心は歯科医師になってからも変わらず、大学院では「骨のないところに骨を作る」という再生療法の基礎研究に没頭しました。遺伝子レベルで細胞がどう動き、組織がどう再構築されていくのか。遺伝子解析を駆使して仮説と検証を繰り返す日々は、現在の私の診療スタイルの根幹となっています。一本の歯、一つの歯周組織を診るとき、私は常に「なぜこの状態になったのか、どうすれば生物学的に正しい再建ができるのか」という科学的なプロセスで考えます。この「科学者の目」があるからこそ、感覚だけに頼らない、再現性の高い精密な治療が可能になると自負しています。
| 「ていねい、やさしい、いたくない」というコンセプトは一見シンプルですが深い意味があるそうですね。
私は口が回る方ではないので、自分自身の特徴を端的に伝えられる表現を選びました。私が考える「優しさ」とは、単に言葉を添えることではなく、「相手をより良く理解しようとする姿勢」そのものです。歯科医院に来られる方は、過去に不十分な説明のまま治療を進められたり、痛い思いをしたりして、深い不信感や恐怖心を抱えていることが少なくありません。私たちはまず、患者さんとのラポール(信頼関係)の形成を最優先します。また当院の白を基調とした空間は、患者さんの不安をリセットし、ここから新しい健康な人生を描き直すためのキャンバスでもあります。患者さんに「歯科治療は怖くない、痛くない」という成功体験をしていただく。麻酔の技術一つとっても、科学的な根拠に基づき、最も痛みの少ない手法を追求しています。安心という土台があってこそ、高度な医療は初めて機能するのです。
歯を残すための「4-META接着技術」の追求とレーザー治療による物理学的アプローチ
| 他院で「抜歯」と言われた歯を救う具体的な技術について教えてください。
私は大学病院では口腔外科に在籍しており、歯を抜くのは得意分野なのです。しかし、インプラント治療が確立されてからというもの、安易に抜歯が選択されるケースが多くなっていると感じます。では歯を残すためにどうすれば良いのか。実は歯を残すというのは「言うのは易しいが、行うのは難しい」ことです。当院では [ 4-META ] という特殊なモノマーを含有した接着剤を用いた、高度な接着治療を採用しています。従来の歯科医療では、歯根だけになってしまった歯は「土台として持たない」と判断され、抜歯になるのが通例でした。しかし、この技術を用いれば、歯の組織と歯科材料を分子レベルで強力に一体化させ、歯を構造体として再構築できます。もちろん将来のリスクを考え、抜くべきケースについては明確な診断のルールを設けています。まずは「自分の歯で一生噛む」ための最大限の努力を尽くすのが当院の信念です。
| 炭酸ガスレーザーを 年以上活用されているそうですね。その活用法には独自の理論があるとか。
当院では LLLT(低出力レーザー治療)という、レーザーで組織を活性化させる手法を第一選択としています。非接触型レーザーの治療エネルギーは「照射距離 × 照射時間 × 照射出力」という方程式で決まります。患部からの距離が変われば照射エネルギーも増減するので、メーカーの設定数値だけに頼ることはできません。歯科医の間で非接触型のレーザー治療は難しいと言われているのはそのためです。私は照射中の組織の変化をリアルタイムで観察し、その場で出力を微調整します。これにより、重度の歯周病であっても血流を改善し、骨の吸収を抑えることが可能になります。また勘違いしてはいけないのは、レーザー治療は「魔法の杖」ではないということです。なぜなら人間の身体には、治癒するための時間も必要だからです。ただ長時間照射すれば良いというものではありません。これは 年間、毎日レーザーの光と組織の反応を見続けてきたからこそ見極めることができる領域です。
| 保険診療と高度な医療(自費診療)のバランスについては、どのようにお考えですか?
私は、良い歯医者を見分けるポイントは「保険診療をどれだけ丁寧に、誠実に行っているか」にあると思っています。何故ならほとんどの患者さんが必要としているのは、保険での基本診療だからです。高度なテクノロジーを用いた自費診療については、医学的なメリットを考慮した上で、患者さんが自身のライフスタイルに合わせて選択できるようサポートします。炭酸ガスレーザー治療については、予防効果が非常に高いため、基本診療の質をさらに高める強力なサポートとして提案させていただいています。「自分自身が受けたいと思う治療を患者さんに提供する」というルールをスタッフ全員で共有し、誠実な医療を追求し続ける。それが三代続く当院の信頼の源泉です。
オペラや能といった表現活動が地域医療を担う歯科医師としての感性を磨く
| 先生はプライベートでオペラや能の舞台に立たれるなど、非常に多彩な素顔をお持ちです。
歯科は口に関わる仕事ですが、口は食べるためだけのものではありません。声を出す、歌う、自己を表現するという、人間がより良く生きるための根源的な喜びを司る器官でもあります。私自身、プロのオーケストラ専属の合唱団に所属していることや、能の謡(うたい)を実践することを通じて、声を出すことがいかに身体を活性化させ、心を豊かにするかを実感しています。表現者としての活動は、患者さんがお口の健康を取り戻した先に、どんな素晴らしい人生が待っているのかを想像する力、つまり「共感する力」を養ってくれます。私の趣味活動は、歯科医療という仕事の尊さを再確認させてくれる大切な学びの場でもあるのです。
| 「歩き方」の研究もされていると伺いました。歯科医療とどのような繋がりがあるのでしょうか。
私自身が難病を患い、リハビリを経験したことがきっかけでした。私は身体のメカニズムを再考する中で、人間の上顎(うわあご)は、人が立って歩くという機能と密接に結びついていることを発見しました。また「最新のシューズの機能的進化に、人間の脳や身体能力が追いついていないのではないか」という仮説を持つようになりました。身体は全て繋がった一つのシステムです。歯科医師として、歯だけを診るのではなく、全身を統括する一人の人間として患者さんを捉えたい。リハビリを通じて得た「身体の連動性」への深い洞察は、現在の包括的な診療スタイルに大きく寄与しています。
| 最後に、今後の展望と、お口に悩みを持つ読者へのメッセージをお願いします。
今、歯科医の高齢化や極端な自費診療への偏重により、適切な治療を受けられずに困っている「歯科難民」とも呼べる方々が増えているのではないでしょうか。私は、そうした方々のための「受け皿」となることが自分の使命だと思っています。三代続くこの蒲田の地で、科学者としての分析力と、表現者としての視点を両立させながら、患者さんと共に成長していきたいと思っています。皆さんが一生自分の歯で笑い、颯爽と歩み続けられる未来を支え続けること。それが私の願いです。どんな些細なことでも、気軽にご相談ください。






